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一般・患者向け

がん治療

“がん”の治療内容などについて、分かりやすくQ&Aで解説します。

食道がん

Q1.食道がんにはどんな種類のがんがあるのでしょうか?

食道がんの組織型は日本では大部分が扁平上皮がんです。欧米では胃との境界部にできる腺がんが多く、胃食道逆流との関連が研究されています。今後日本でもこのタイプのがんが増える可能性があると言われています。東洋人に多い扁平上皮がんは、多発することが多く、食道に限らず粘膜が扁平上皮である口腔や咽頭・喉頭にもがんが発生することがしばしばあります。

Q2.食道がんにかかるとどんな症状がでるのでしょうか?

早期では症状を認めない場合も多くあります。たまたま胃の内視鏡検査の際に見つかる場合もありますが、明らかな自覚症状が出現するのは進行してからです。進行がんであってもまったく症状の無い場合もあります。がんが進行するとがんが食道の内腔を占居し、通過障害(食物がつかえる、食べると吐いてしまう)が生じます。この場合、がんはすでにリンパ節やその他の臓器に広がっている可能性が高くなります。

Q3.食道がんにはどんな治療がありますか?

がんの進行度によって変わってきます。詳しくは日本食道がん学会の編集した食道がん診断・治療ガイドライン(2007年4月版:金原出版株式会社\2000)に述べられています。

  1. ごく早期(粘膜内に留まる)のがんは内視鏡で切除することが可能です。
  2. 進行がんでは基本的に食道切除(手術)とリンパ節郭清(リンパ節を食道と一緒に切除する)が推奨されます。摘出した組織を病理学的検査(顕微鏡でがんの型、進行度、リンパ節への転移の検査)を行った後に、必要に応じて補助療法(食道切除の後に行う化学療法や放射線療法)を行うことになります。

    最近では化学放射線療法の有効性も期待できるようになり、進行がんでも病期II・III期の症例に対しても手術と変わらない成績が得られるとの報告もあります。

    われわれは切除可能な症例にはできるだけ切除を行い補助療法でさらに治療効果をあげることを基本方針としています。

  3. がんが進行して切除が不可能、あるいは切除してもがんがとりきれない場合には化学放射線療法を行います。化学放射線療法は従来5-FUとシスプラチンという薬剤を投与して放射線を併用する治療法が標準であり効果をあげてきました。

    われわれは新規抗がん薬であるTS-1とドセタキセルを用いた化学放射線療法の臨床試験を行っており、現在のところ同等の治療効果をえています。この治療法では有害事象(副作用)も少なく、状況によっては通院での治療(通院治療センター)も行えます。

Q4.食道切除術にはどのような方法がありますか?

食道がんは食道内に多発しやすい性格を持っています。また食道壁内のリンパ管に病巣がある場合(壁内転移)も多く、頚部食道から下の食道を切除し再建する食道亜全摘術が基本になります。

食道亜全摘術は右胸を開いて胸部食道の切除とリンパ節郭清を行い、閉胸後に開腹して腹部食道切除とリンパ節郭清を行います。食道の代用には通常胃管を用います。次に頚部に切開を加え食道を切断し必要に応じて頚部のリンパ節郭清をした後に、胃管を吊り上げて頚部食道と胃管とを吻合します。

このように手術範囲が頚部・胸部・腹部の3カ所におよぶため手術侵襲(手術による患者さんの負担)は大変大きなものとなり、周術期の管理が重要になります。われわれは、麻酔科の積極的なサポートを得て術後の早期をICUで厳重に管理しております。また、侵襲をきっかけとして発生するサイトカインやフリーラジカルといった化学物質ががんの転移や成長を促進するという基礎実験に基づき、できる限り侵襲の軽減に取り組み、合併症の発生を抑える努力をしております。

食道がんでも胃に近い胸部下部食道がんや腹部食道がんに対しましては、開胸することなく開腹創から横隔膜を切開し食道を切除する経横隔膜下食道亜全摘術を行っております。この術式では人工呼吸器での管理が不要ですし、術後すぐに病棟へもどり翌日から動けるという侵襲の低い、早期回復のできる術式です。

また、食道と胃の境界にできる腺がんに対しては、下部食道と胃切除を行う拡大胃全摘術を、胸を開くことなく開腹下に行っています。

Q5.食道切除術を行った後の生活はどうなりますか?

食道切除後には物が食べられるのだろうか、流動食しか食べられないのでは?と疑問に思われる方が意外に多くおられます。また、日常生活はもとより、仕事もできなくなるのではと不安になる方もおられます。

確かに、食道を切除して胃を食道の代用としますので、胃の貯留する機能は著しく損なわれます。胃を切除した場合と同様に1日の必要な摂取量を3回ではなく5-6回に分けて食べていただき、さらに1回の食事に時間をかけてよく噛んで食べるということが必要となります。 また、ときどき食道と胃の吻合部に狭窄をきたして、食べたものがつかえるといった症状が出ることもあります。この場合には狭窄部を拡張することで症状を改善できます。持ち上げた胃は単なる筒となるため食物を下へ送り出す機能も損なわれます。持ち上げて胃が無くなるとか小さくなると、すぐには手術前と同じように食べることができません。時間の経過によって(半年から1年をかけて)だんだんと落ち着いてくるのが普通です。

40代−50代の働き盛りの方もいらっしゃります。皆さま仕事をしなくては家族を養えません。そうした方々も多くは早期に職場に復帰され、元気に仕事を継続されております。若い方ほど慣れるのが早いように思います。

Q6.手術を受けた場合の入院期間はどれくらいでしょうか?

検査を入院で行うか、外来で行うかで異なります。また、がんの進行度に応じて検査の数も変わってきます。入院での検査の場合約10日が必要です。術後ですが、クリニカルパス(治療計画)に沿って治療を進めます。現在のところ、食道亜全摘術では3週間のクリニカルパスを用いています。また進行がんの場合、化学放射線療法を行います。 われわれは、予定治療が完遂できることで効果が最大限にひきだせると考えており、いったん退院して自宅での療養を1−2カ月していただいた後に、補助化学放射線療法を行っております。この場合は約6週間の入院が必要になります。

Q7.化学放射線療法とはどのようなものでしょう。

化学放射線療法は、化学療法と放射線治療を同時に行う治療法です。

食道がんは放射線感受性が高いがんとされています。しかしながら、進行がんでは放射線治療だけでは治療効果が期待できません。そこで、化学療法(抗がん薬治療)と併用することでより高い治療効果を期待できるようになりました。これまで日本で標準的に行われてきた化学放射線療法は5-FUとシスプラチンの併用化学療法に放射線治療を加える方法であり、切除ができない進行食道がんに対して行われた臨床試験でも奏効率は68.3%、2年生存率31.5%と高い治療効果が示されています。

この治療法は優れた治療法ではあるのですが抗がん薬を併用しさらに放射線治療も加えるため強い副作用も発生します。また持続点滴での薬剤投与ですので、点滴に縛られてしまいます。

われわれは、内服薬であるTS-1と点滴での投与を行うドセタキセルという新規抗がん薬を用いて化学放射線療法の臨床試験を行っております。同じように高い奏効率を期待し、副作用を軽減する目的で現在試験を継続中です。この治療は状況が許せば通院(通院治療センター)でも可能です。

また、化学放射線療法がいったん効いたあとの再燃(再びがんが大きくなった)症例に対しましても、これまでは有効な治療が無かったのですがドセタキセルとネダプラチンという薬剤を併用することで外来での通院治療(通院治療センター)を行っております。

充実したスタッフ・設備の通院治療センターを併設しており、できるだけ外来へ通院していただいての化学療法を行い日常生活を変わりなくすごしていただくことを心がけています。

Q8.食道がんに対する治療(手術)はどのような方針で行っていますか?

われわれは、患者さんに“早く元気になり、長く元気でいてもらいたい”と願いをこめて手術を行っております。そのためには患者さんの年齢、心臓・肺・肝臓・腎臓など各臓器の状態、糖尿病など他の疾患との合併などを十分吟味し、どの手術法がふさわしいかを検討いたします。また、化学放射線療法もできるだけQOL(生活の質)を保ち、なおかつ効果を期待できる治療法を、それぞれの方の状態・状況に応じてできるよう心がけています。

最新の医療を用意すると同時に患者さんやご家族さまとよくお話をして納得のいく治療ができるように努力をしています。