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免疫学教室




教授石原 克彦
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講師井関 將典
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助教矢作 綾野
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教育重点及び概要

免疫系は感染防御機構を担う高次生命機能であり、侵入した病原体等の外来抗原を非自己と認識して排除する精緻な仕組みである。一方、免疫系の破綻により免疫不全症、癌、アレルギー、自己免疫疾患が発生する。ジェンナーのワクチン接種に始まる免疫学は、天然痘撲滅という感染症制圧の偉業を成し遂げたのみならず、免疫応答の人為的抑制により臓器移植療法を実現している。また20世紀末に発生したAIDSに対してその原因ウイルスと病態を迅速に解明して有効な治療法を開発し得たことは、現代の医学生物学(ウイルス学、分子生物学、免疫学)が総力を挙げて新しい致死的感染症を克服した輝かしい事例である。新型インフルエンザやジカ熱などの新興感染症は免疫学の挑戦が果てしなく続くことを示している。内なる環境因子である腸内細菌叢が免疫系のみならず代謝系や精神神経系の制御にも関与することが解明され、治療標的として注目されている。
 免疫学の研究は、モノクローナル抗体とフローサイトメーター、表面抗原やサイトカインの遺伝子クローニング、発生工学的手法による遺伝子改変マウス等の先進技術を貪欲に取り入れて、免疫応答に関わる細胞、タンパク質、遺伝子、臓器の機能を生体レベルで解明し、免疫疾患の病態解明から根治療法の開発に精力を注いでいる。関節リウマチにおける抗IL-6受容体抗体療法や癌に対する免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の画期的な効果は日本発の基礎医学の研究成果が臨床へ還元されている好例である。しかしこの著しい進歩によって蓄積された情報は膨大であり、初学者に取っ付きにくく難解との印象を与えているので、医学生に対しては、臨床医として必要な基本事項の理解を第一目標とする。特に免疫系の仕組みと疾患の病因・病態との関連、治療応用の成果を理解することが重要である。具体的には、以下の点に留意して講義・実習を行っている。

  • 1) モデルコアカリキュラムの内容を必須の学習事項とし、臨床医に必要な知識を伝授する。興味をもって理解できるように、発見の歴史、医療との関連や最新の話題等も講義に盛り込む。
  • 2) 免疫系の臓器、細胞、分子、遺伝子の重要項目(T、B細胞、抗原提示細胞、抗体、抗原受容体、MHC)は、徹底的に繰り返し解説する。
  • 3) 現代免疫学として重要な基礎概念(自然免疫と獲得免疫、クローン選択説、リンパ球の抗原認識多様性、免疫寛容、免疫記憶など)を確実に理解させ、生活環の異なる様々な病原体に対して免疫系が如何に有効な感染防御の生体反応を誘導しているかを理解させる。
  • 4) 免疫系主要疾患の発生機構と病態を詳しく解説し、治療法の理論的根拠の理解へ導く。
  • 5) 免疫学的手法、特に臨床の現場で重要な検査法の基礎を理解させる。その一部は、講義期間中の実習で体験し、細胞や分子を実際に触れて生体内のシステムを理解させる。
  • 6) 平成30年版医師国家試験出題基準を確認し、TLR、Th17、Tregについて2、4、6学年で解説した。

 平成28年度も免疫と生体防御ユニットの講義を2学年の2学期に行った。教科書はエッセンシャル免疫学と免疫学コア講義とした。時間数は講義43コマ、中間試験1コマ、実習12コマであり、講義のうち2コマ(がん免疫、アレルゲン免疫療法)で他科講師を依頼した。実習では、フローサイトメトリー解析とELISA法を行い、ヒト末梢血中CD4T細胞数の算定によるAIDSの病態理解やヌードマウスやサイトカイン欠損マウスの免疫グロブリンアイソタイプ定量によるクラススイッチ制御機構の理解を目的とした。臨床検査関連の白血球数算定とABO型血液型判定も行っている。
 4学年の免疫・アレルギー疾患3コマ、6学年の臓器別総合講義I 4コマも講義を担当している。
○昨年度の自己点検・評価と課題
 1コマ60分への改変に際して免疫学に馴染みやすくすべく追加した新規講義「免疫系と情報伝達」、「環境因子と生体反応」の講義時期を検討した。また、2名の助教と6月着任の講師は専門分野に関連する内容の講義(結核、神経脱髄疾患、自然リンパ球)を1コマずつ担当した。
 講義では、パワーポイントで作成したスライドの配布資料には空欄を設けて、重要語句の筆記作業を講義中に行わせている。また、スライドを遠隔操作用ポインターで操作しながら教室内を移動し、重要な点について学生に質問し、答えさせている。講義中に想起や思考の機会を増やすことによって記憶の定着を図っている。
 講義内容は基礎事項の解説に加えて、実験や検査結果を実際に見て免疫学の基本原理や免疫系疾患の病態を理解することを目指して、3つの話題(①SCIDの原因としてのサイトカイン信号伝達の異常、②ケモカイン受容体の変異とHIV抵抗性、③皮膚移植とMHC拘束性)を取り上げている。臨床でも役立つ免疫疾患の病態の理解、さらには医師国家試験での思考力を問う問題の解答能力の向上につながる基盤となることを期待している。
 講義で知識を提供するだけでなく、講義期間中の適切な時期に適切な演習課題に取り組ませ、中間試験により期末試験前に一定レベルの理解度に到達させている。即ち講義毎に講義内容理解度確認問題(計約500題)を配付し、その中から選んだ100問を中間試験に使用した。さらに免疫学の重要項目に関する30の記述問題演習を1〜2問ずつ講義毎の復習課題とし、それらの中から数題を中間および期末試験に選択問題として出題した。中間試験では、設問項目ごとの正答率を個人票として渡し、自己の弱点を把握して期末試験に備えることができるように還元している。期末試験では、免疫学全範囲の重要項目についての理解度を評価できるように様々な様式の設問を用意した。このように重要項目を明示した免疫学の学習方法に順応して基礎知識が以前より定着している印象がある。成績不良者には再試験を行い、基本的な学習目標へ到達する機会を提供している。一方、意欲ある学生の知的好奇心と思考力を最大限に発展させることを目的として、免疫学上の既成概念を破る知見について講義している。この講義内容に関する記述問題を、配点されないチャレンジ問題として期末試験に出した所、挑戦者29名中5名が適切に解答した。やや難解であるが免疫学的な面白さを内包する講義内容に興味を持った学生が前年(18名/1名)より大幅に増加した。
 実習レポートは教員が直接目を通し気付いたことを記入している。28年度では、ワークシートへの記入だけでなく、詳細な考察や独創的な疑問点をレポートに記述した者が2名いた。
 医学研究への扉には2名が参加した。IL-6信号異常による関節リウマチマウスモデルにおけるIL-13の役割解析を矢作助教が、LPS腹腔内投与によるマウス脳内ミクログリアの変化について石原が指導し、学生は生体レベルでの免疫応答および免疫─神経連関について理解を深めることが出来た。

研究分野及び主要研究テーマ

「生体防御機構である免疫制御機構の破綻による自己免疫及びアレルギー疾患の病態の解明と治療法の開発」を教室の研究主題とし、医学としての免疫学研究を進めている。

  • 1) 関節リウマチマウスモデルgp130F759の病態
     サイトカイン受容体gp130の点変異Y759Fを遺伝子素因とするgp130F759の最初期病変の解析を進め、Padi4遺伝子発現の増加と抗CCP抗体の産生など、ヒト関節リウマチの発症前病態との類似性を見出だした。関節リウマチ関連の微生物感染による関節炎誘発モデルを開発した。
  • 2) ADPリボシルシクラーゼBST-1/CD157の機能
     消化管におけるBST-1の局在を免疫組織学的に解析し、ファミリー分子CD38と比較した。また、無菌化したBST-1欠損マウスにおける免疫学的表現型異常を学会報告した。

○昨年度の自己点検・評価と課題
 免疫学の学部教育の基盤は完成しており、期末・総合試験問題の見直しを行った。最新の免疫学における話題を提供し、興味を持って考えることにより理解を深める工夫を継続する。多角的に進めているgp130F759とBST-1の研究は課題の選択と集中により論文化を進める。

今年度の方策

講義関連資料を点検・評価し、学生のアンケート結果を精査してわかりやすく改善すると同時に免疫学の魅力を理解する学生が増えるように工夫する。3年生有志の英語論文抄読会を開催する。研究は BST-1の腸管─神経─免疫系制御機構への展開を進める。

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