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消化器外科学教室




教授平井 敏弘
准教授山下 和城
講師浦上 淳
講師松本 英男
講師奥村 英雄
講師岡 保夫
臨床助教平林 葉子
臨床助教甲斐田 祐子

 医学の進歩に対応するため、外科学もそれぞれの分野で専門化し、細分化されてきているが、目標は外科学を治療学にとどまらず、surgical scienceという立場で教育を行っていきたい。

1.ブロック講義
 損傷・感染、新生物、外科的治療、肝胆膵、食道胃腸、救急のブロック講義を担当している。

2.高学年に対する臨床実習(クリニカル・クラークシップ)
 平成18年から5年生の臨床実習は講義を廃止し、完全なクリニカル・クラークシップとしている。学生は、研修医および主治医とチームを組み患者の診療にあたる。チーム内で診察所見、検査結果を検討し治療方針を決定した上で指導医他の上級医と相談する(ニューパスウェイ方式)。学生は医学教育モデル・コア・カリキュラム ─教育内容ガイドライン─(教育プログラム研究・開発事業委員会)を中心に病態を理解し、基本的な手技を修得する。
 また、全身及び局所の諸変化のみならず、心の動きの観察を含めた発表を全スタッフの前で行い、正しい外科的診療のあるべき姿を学び、発表の仕方、適切な言葉の使い方の訓練をも同時に行う。

○自己評価と反省
 平成14年度第2学期からは医学教育モデル・コア・カリキュラム─教育内容ガイドライン─に従ってブロック講義の見直しが図られ、教官全員の講義内容が具体的にシラバス形式で提出された。そのため、講義者間でのチェックが行われ、講義の欠落ならびに重複が避けられ、かつ学生に講義の前に修得の目標が示され、良い方向となったと考える。学生にはこれを基本にして、教科書を繙くことを勧めている。

1.消化器癌の縮小手術と術後生理機能に関する研究(研究業績1、2、3、10)
 胃がんに対する術式は腹腔鏡補助下胃切除術、胃部分切除術あるいはわれわれの行っているLES温存胃全摘術、LSE・迷走神経温存噴門部分切除術など縮小手術の選択枝が増えてきた。またリンパ節郭清も、センチネルリンパ節を同定することで郭清範囲を重点化することが試みられている。しかし、これらの術式は縮小手術の1つであり、根治性が損なわれてはならない。また同時に術後の消化管機能への明確な利点が必要であるがこれらを裏づける成績は未だ充分とはいえない。われわれは、センチネルリンパ節同定法を工夫すると同時に、リンパ節の微小転移が予後に及ぼす影響について検討している。また、機能温存術後の消化管機能について、愁訴のみならず胃電図、マーカー法、カーボン13法等を用い機能温存術式の有用性を客観的に評価している。

2.手術の侵襲と癌の進展に関する機構の解明(研究業績1、2、3、10)
 手術侵襲は、術後の臓器機能に障害を及ぼすのみならず腫瘍の転移・増殖を促進する。この現象をsurgical oncotaxisとして報告してきた。この現象には、侵襲によるサイトカイン・ストームと白血球の活性酸素産生能が関与しているが、この一連のカスケードにはNF-κBが制御していると考えられる。今後NF-κBをマーカーにしてsurgicaloncotaxisの予測、予防、制御の可能性を検討する。

3.分子生物学を応用した抗癌薬感受性試験(研究業績4、5、8)
 癌化学療法の個別化は感受性試験によってもたらされる。従来の抗癌薬感受性試験は、摘出材料を必要とすることや摘出された時点での感受性が評価されるという欠点を有していた。われわれは、ATP assayを用いることで生検材料による感受性試験が可能であること、また放射線感受性試験においてはアポトーシス転写因子が増加する症例が高感受性であることなどを報告してきた。そこで、生検材料を用いて、アポトーシス転写因子(p53、p21、Bax、caspaseなど)の動態を指標にした短期間の抗癌薬投与による、早期の抗癌薬感受性試験の確率を検討している。

4.大腸癌化学療法の個別化治療に関する研究(研究業績6、7)
 肺癌、胃癌で使用されることが多いCisplatinの耐性因子としてERCC1が注目を集めており、肺癌ではERCC1が高発現時にはCisplatinが効きにくいことが判明している。OxaliplatinはCisplatinと同じく白金製剤であり、ERCC1がOxaliplatinの耐性因子である可能性は十分考えられる。
 ERCC1発現値とFOLFOXの奏効率との関連からERCC1の耐性因子としての意義を求める。FOLFOXの奏効率は臨床成績と抗癌剤感受性試験の2つからアプローチする。すなわち合計3つのデータ(大腸癌組織のERCC1発現値、臨床のFOLFOX奏効率、感受性試験のFOLFOXの奏効率)の相互関連からERCC1の意義を求める。抗癌剤感受性試験について、当院は先進医療として認可されており、症例を集積中である。ERCC1mRNAの測定についてはこれまで十数例程度測定経験がある。これまでの結果からERCC1mRNAの測定値と臨床でのFOLFOX奏効率を統計処理してみると、非常に興味がある傾向が得られている。

5.肝胆膵領域に関する研究(研究業績9)
 以下の項目をテーマとして研究を進めている。
 肝癌に対する鏡視下手術、膵癌・胆道癌に対する外科的治療の工夫、膵癌・胆道癌に対する術後補助化学療法の研究、膵癌・胆道癌予後因子の研究、急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下手術の工夫、急性膵炎に対する鏡視下手術

○自己評価と反省
 未だ研究途中の課題が多く、十分な成果をあげているとは言い難い。学会発表を通じて研究の内容を充実させ、科学的な思考を習得するとともに医療の進歩に貢献したい。
 学生の教育においてはニューパスウェイ方式を用いて、能動的態度を身につけるべく努力したい。また、早期および後期研修においては、知識の習得もさることながら手術手技の習得を段階的にすすめ、社会に貢献できる外科医を多く育てたい。研究面では手術侵襲の制御、集学的治療の確率など主として消化器がんの治療成績の向上に向けて努力したい。
  1. Hirai T, Matsumoto H, Iki K : Lower esophageal sphincter-and vagus-preserving proximal partial gastrectomy for early cancer of the gastric cardia. Surg Today 36 : 874-878, 2006
  2. Hirai T, Matsumoto H, Tsunoda T : Recent Advances in Chemoradiotherapy for Esophageal Cancer Patients. Kawasaki Med J 33 : 181-187, 2007
  3. 平井敏弘,松本英男,角田司:食道がんに対するわれわれの治療方針とその成績−特に,経横隔膜的食道亜全摘術について−.川崎医学会誌一般教養 34:1-6,2008
  4. 平井敏弘:食道胃接合部癌の病態と早期診断・治療−外科からみた食道胃接合部癌−.THE GI FOREFRONT 4:74-76,2008
  5. 平井敏弘,沢木明,杉山敏郎,高橋剛,土井俊彦,廣田誠一,山田康秀,Eisenberg B:さらなるGIST治療の進展をめざして.外科治療 99:1-5,2008
  6. Yamashita K, Oka Y, Okumura H, Matsumoto H, Urakami A, Hirai T, Tsunoda T, Tarumi K, Haruma K, Akiyama T : Giant inflammatory polyp in a crohn's desease patient. Kawasaki Med J 35 : 61-62, 2009
  7. Yamashita K, Oka Y, Okumura H, Matsumoto H, Urakami A, Hirai T, Tsunoda T, Tarumi K, Haruma K : An ileal perforation after infliximab treatment for crohn's disease in a heart transplant patient : A case report. Kawasaki Med J 35 : 63-65, 2009
  8. 平井敏弘:イマチニブによる術前・術後補助化学療法.臨床外科 64:185-192,2009
  9. 浦上淳:特集 消化器癌化学療法の最前線 8 .胆嚢癌の化学療法.外科 71:1079-1086,2009
  10. 松本英男,平井敏弘,角田司:手術アトラス食道癌に対する経横隔膜的食道切除術.消化器外科 32:1005-1015,2009

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