鼠径ヘルニアとは

小児鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)は小児ではもっとも多い外科疾患であり、幼小児の1%から3%に存在すると言われています。

小児鼠径ヘルニアとは

小児鼠径(そけい)ヘルニアは胎生期に存在している腹膜鞘状突起が、生後も閉鎖せず開存していることが原因でおこります。

開存している鞘状突起に、腹腔内臓器(腸管や卵巣)が脱出するといわゆる脱腸となり、疾患として認識されます。このように、原因そのものは生まれつきですが、脱腸として発症する時期は人によってまちまちであり、生直後から見られるものから大人になって初めて脱腸が出現する人も少なくなく、一生発症しないで過ごす人も数多くいると言われています。鞘状突起が開存していても、脱腸になる人とならない人がいる理由は現在でも解明されていません。

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自然経過

小児鼠径(そけい)ヘルニアは自然に治癒することは少なく、また放置しておくと脱出した腸が戻らなくなって血流が悪くなり、ひどいときには壊死してしまうことがあります。このような状態を嵌頓(かんとん)といい、小児鼠径(そけい)ヘルニアのもっとも重要な合併症です。嵌頓が起こったときにはすみやかに整復しなければならず、それができないときには緊急手術が必要となります。

新生児期から生後半年くらいまでの乳児期早期は嵌頓を起こしやすいと言われており、特に注意を要します。

熟練した医師の手によれば、ほぼ全例で嵌頓の整復は可能ですが、一度整復できても再び嵌頓を引き起こす危険は大きいため、早期に手術治療を行う必要があります。

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どのような治療をするの?

鼠径(そけい)ヘルニアには原則として外科手術を行います。ヘルニアバンドなどの保存的治療では治癒することはなく、かえって機械的刺激によって癒着などを起こしたりするため、推奨されていません。手術術式は、従来よりヘルニア嚢の高位結紮術が行われてきましたが、近年になり、腹腔鏡を用いて最小限の侵襲でヘルニア嚢の結紮を行う術式が考案され、現在普及しつつあります。

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腹腔鏡下鼠径ヘルニアの手術

最近になって考案された手術方法です。お臍から直径3mmの腹腔鏡のカメラをいれ、内側から観察しながら、鼠径(そけい)部から糸だけを挿入し、ヘルニア嚢の結紮を行います。従来法と比較すると、創痕が小さく(成長するとほとんどわからなくなります)反対側の観察と治療が同時にできると言う利点があります。

左図は内側からヘルニア嚢をみたところです。ヘルニアの孔が開いていることがわかります。この孔の周囲に糸をかけて孔を閉じます。

手術後は右図のようになりヘルニアは出なくなります。

正常では左図のように閉鎖しています。しかし、症状のない反対側に右図のようにヘルニア(嚢)孔を認めることがあります。同時に手術を行うことにより、将来の発症を予防できます。

腹膜鞘状突起はもともと左右一対あり、片方が開存している人はもう片方も開存している確率が高くなります。そのため、片側の鼠径(そけい)ヘルニアを持っている人は反対側の鼠径(そけい)ヘルニアも起こすことがしばしばあり、片側手術後の対側発生率は5%~15%程度と報告されています。つまり、片側の手術を受けた人のうちの大体10人にひとりは、反対側にも鼠径(そけい)ヘルニアを発症し、2回目の手術が必要になります。従来の手術法では将来反対側が発症するかどうかを正確に予知することはできません。

腹腔鏡下鼠径(そけい)ヘルニア手術では腹腔内から両側の鞘状突起を観察することが可能であり、もし開存していればその場で手術を行うことができます。開存がなければ、対側発生することはないため、対側発生に対する2回目の手術が必要となることはありません。

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当院での治療方針

上記のような理由から、当院では小児鼠径(そけい)ヘルニアに対しては、腹腔鏡下手術を標準術式としています。

当院での鼠径(そけい)ヘルニア手術は2泊3日入院で行っています。手術前日に入院していただき、手術翌日に退院となります。外来診察から入院までは通常1ヶ月程度お待ちいただきますが、嵌頓を起こされた方に対しては、救急外来で整復したのち、翌日か翌々日に準緊急で手術を行っております。

手術後は入浴を1週間制限していますが、運動の制限はありません。退院後1週間以内に外来を一度受診していただき、問題がなければ治療終了となります。

なお、鼠径(そけい)ヘルニアは年齢により乳児医療の対象となります。

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