研究テーマ



 当科の大学院では、リウマチ性疾患・自己免疫疾患の診療現場で生じた疑問・課題からテーマを設定し、国際的に医学・生理学の発展に資するような基礎的研究を行うことを基本方針としています。具体的には以下のテーマに取り組んでいます。

1) 炎症性骨破壊におけるアンジオテンシンIIの役割の解明

 アンジオテンシンIIは生体の血圧や細胞外液量の調節に関わるのみならず、骨代謝へも作用していることが近年注目されています。関節リウマチを代表とする全身性炎症に伴う骨破壊あるいは骨量減少に与えるアンジオテンシンIIの役割は明らかでなく、教室独自にダブルミュータントマウスあるいはトリプルミュータントマウスを作製し、マイクロCTによる画像的解析および分子レベルでの解析を行っています。

2) 全身性エリテマトーデスモデルマウスにおけるアダプター蛋白SH3BP2の役割の解明

 SH3BP2は免疫担当細胞に広く発現し、SykやPLCγなど細胞内シグナル伝達の調節にも関与することが報告されています。教室では全身性エリテマトーデスモデルマウスを用い、自己抗体の産生、病態形成におけるSH3BP2の役割を解析し、この分子をターゲットとした自己免疫疾患の治療法の可能性を探究しています。

3) 自己炎症性疾患の炎症誘導・遷延機序の解明

 原因不明の周期的発熱を繰り返す病態として、近年「自己炎症性疾患」という病気の概念が提唱されました。疾患に関わる遺伝子異常が同定されてはいるものの、その遺伝子変異が炎症を引き起こす機序についてはまだ十分に分かっていません。教室では、自己炎症性疾患でみられる遺伝子変異を組み込んだ細胞モデルを用い、その炎症誘導・遷延化機序を解析しています。

4) 破骨細胞分化・骨代謝におけるタンキレースの役割の解明

 タンキレースは蛋白の翻訳後修飾であるポリ(ADP-リボシル)化に関与する酵素蛋白であり、その阻害剤は癌治療領域でも注目されています。タンキレースは破骨細胞分化に関与している可能性が近年報告されており、教室ではタンキレース阻害剤の骨代謝に与える影響をin vitroおよびin vivoにて詳細に解析しています。

5) マイオスタチン変異マウスの骨・筋解析

 マイオスタチンは筋量を調整するサイトカインであり、その機能低下は筋量を著明に増大させます。最近、マイオスタチンが破骨細胞に直接作用し、骨量も調整していることが報告されました。教室ではダブルミュータントマウスを独自に作製し、マイオスタチンが炎症性の骨破壊や筋量低下に及ぼす影響を解析し、新たな治療薬の創出に取り組んでいます。



【共同研究施設】
学外:米国ミズーリ大学カンザスシティ校(骨代謝研究部門)、米国ミシガン大学(リウマチ科)、京都大学(発達小児科学)、岡山大学(CKD・CVD地域連携包括医療学講座)、広島大学(分子遺伝学)、九州大学病院別府病院(内科)
学内:免疫学、衛生学、放射線医学(核医学)、腎臓・高血圧内科学、神経内科学、自然科学


【主要論文】
○ Fujita S, Mukai T, Mito T, Kodama S, Nagasu A, Kittaka M, Sone T, Ueki Y, Morita Y. Pharmacological inhibition of tankyrase induces bone loss in mice by increasing osteoclastogenesis. Bone 2018;106: 156-66.
○ Mukai T, Gallant R, Ishida S, Kittaka M, Yoshitaka T, Fox DA, Morita Y, Nishida K, Rottapel R, Ueki Y. Loss of SH3 domain-binding protein 2 function suppresses bone destruction in tumor necrosis factor-driven and collagen-induced arthritis in mice. Arthritis Rheumatol 2015; 67:656-67.
○ Yoshitaka T, Kittaka M, Ishida S, Mizuno N, Mukai T, Ueki Y. Bone marrow transplantation improves autoinflammation and inflammatory bone loss in SH3BP2 knock-in cherubism mice. Bone 2015; 71:201-9.
○ Mukai T, Ishida S, Ishikawa R, Yoshitaka T, Kittaka M, Gallant R, Lin YL, Rottapel R, Brotto M, Reichenberger EJ, Ueki Y. SH3BP2 cherubism mutation potentiates TNF-α-induced osteoclastogenesis via NFATc1 and TNF-α-mediated inflammatory bone loss. J Bone Miner Res 2014; 29:2618-35.
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