岡山大学大学院 平田 あずみ
(平成20年度 受賞者)

Hertwig上皮鞘基底膜とセメント質・歯周組織形成のメカニズム

 この数年の歯の再生、更には歯周組織の再生への関心の高まりとともに、その基礎となる歯根・歯周組織の形成を制御する因子や細胞に関する研究が世界的に注目されています。歯・歯周組織の形成には上皮組織と間葉組織の相互作用が必須で、その分化誘導シグナルとして細胞外基質に存在するさまざまなサイトカインや増殖因子が関与することが明らかにされています。歯周組織のひとつであるセメント質は、歯根を覆い、咀嚼力に耐えうるための緩衝材となる歯根膜を歯に固定する機能を果たしています。歯科の代表的な疾患である歯周病では、このセメント質の破壊により歯の動揺・喪失が生じますし、また近年盛んに行われているインプラント治療にも歯周組織は重要であるといえます。
 私はこれまで、「基底膜」に着目し、歯根形成過程におけるHertwig上皮鞘とセメント芽細胞分化メカニズムの解明に関する研究を行ってきました。特に,Hertwig上皮鞘基底膜に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカンであるパールカンとその分解酵素ヘパラナーゼの歯根形成過程における動態を検索したところ、パールカンは歯根形成の進行に伴いラミニンなど他の基底膜構成成分に先だってHertwig上皮鞘基底膜から消失すること、一方、ヘパラナーゼ局在は上皮鞘細胞に限局することが明らかとなり、この研究論文は平成19年度第19回歯科基礎医学会賞受賞の栄誉を賜りました。
 ヘパラナーゼは細胞の接着能を亢進し、細胞の浸潤を促進させ、また抱合されている  へパリン結合性成長因子を遊離・活性化するといわれています。ヘパラナーゼが基底膜のパールカンを介してセメント芽細胞の分化・増殖にどのように関与するのか、その作用メカニズムを解明し、セメント質形成および歯周組織形成機構をさらに深く探究することが私の今後のテーマです。この研究を助成してくださった川崎医学・医療福祉学振興会の諸先生方に感謝申し上げながら、新たな一歩として、パリでの留学生活を、つい先日スタートさせたところです。日ごとに秋深まりゆくパリの空の下、私の研究を少しでも発展させることができるよう、日々精進しようと思っております。
 最後になりましたが、勝村達喜理事長先生、諸先生、そして事務局 小牧久壬先生、関係の方々、どうもありがとうございました。川崎医学・医療福祉学振興会のますますの発展を祈念いたしております。
[平成20年9月10日掲載]