川崎医療短期大学 橋本 美香
(平成22年度 受賞者)

医学用語の難しさ

 この度は、平成22年度教育研究助成をいただくことができたことを、心から感謝申し上げます。
 私は、どのようにして医学・医療福祉系学生のために導入教育を行えばいいかということを考えております。医療に関する言葉の難解さに直面したのは、今から10年近く前のことになります。私は、日本語教育については、10年以上教鞭をとってきましたが、医療に関しては全くの門外漢です。学生はそれを知っているので、あるとき、文章表現の講義の際、「先生、褥瘡って分かりますか」と、少し意地悪な眼差しで投げかけられました。「じょくそう?」。響きの良くない感じから、何となく良くないものなのだということは、分かったのですが、答えに窮していると、勝ち誇ったように「床ずれのことですよ」と言われました。このやりとりの後で、「褥瘡」の漢字を確認しました。「褥」は、蒲団の意であり、「瘡」は、腫れ物や切り傷の意であることを確認し、「床ずれ」よりも、より具体的で分かりやすいものなのだと納得しました。
 また、あるときは定期試験のあと、学生から「喘鳴」と書いて何と読むのか、試験に出たけれども分からなかったと質問を受けました。「喘」は、「ぜん」の読みしか知らない私は、「ゼンメイではないの」と答えましたが、やはりこれも聞いたことがない語彙だったので、専門の先生にお聞きしました。その答えは「ゼイメイ」でした。やはり漢和辞書を見ましたが、『大漢和辞典』という最も漢字を多く掲載している漢和辞書にも「ゼイ」の記載はありませんでした。これらのことを通して疑問に思ったことは、医学で使用する漢字とその意味を、大学に入学してきた学生が果たしてどのくらい知っているだろうかということです。これらの漢字は、高校まで学習するいわゆる常用漢字ではありません。さらに漢和辞典を使って確認しても、掲載されていない読み方があるとすれば、自力では調べられないということになってしまいます。
 以上のことが、今回研究助成を賜った「医学・医療福祉系学生のための導入教育」の必要性を考える契機となりました。助成していただいたことを原動力に、医学・福祉系の学生のための効果的な導入教育方策を検討していきたいと思っております。


[平成22年10月7日掲載]