岡山大学 医療教育統合開発センター 三好 智子
(平成22年度 受賞者)

卵巣における卵母細胞−顆粒膜細胞 細胞間コミュニケーション

 この度は、平成22年度教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。この場をお借りしまして選考委員の先生方および関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
 少子化の進行する現代日本において女性不妊は深刻な問題です。女性不妊の原因は多岐にわたりますが、なかでも原発性卵巣機能不全は、正常妊娠に必須の卵巣自体を障害して不妊となります。その診断は臨床的に困難であり、卵母細胞の不可逆性を考慮するとその治療は不可能もしくは姑息的であるといえます。
 私たちは、卵巣に特に強い発現を認め、卵胞発育を調節する新しい細胞増殖因子、骨形成蛋白(Bone Morphogenetic Protein: BMP)に着目して研究を進めてきました。卵巣でのBMPの働きについては、2004年に卵巣機能不全のヒトでBMP-15のプロ蛋白変異が発見され、ヒトでの不妊・卵巣機能異常におけるBMP分子の重要性が認識されています。これまでに我々は、卵母細胞BMPが卵胞における卵母細胞−顆粒膜細胞間の機能的ネットワークを形成して卵胞発育を巧みに調節していることを明らかにしてきました(Endocrinology 148: 337, 2007; Endocrinology 150: 1921, 2009)。今回は卵母細胞に発現しBMP-15とともに排卵を調節する線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor: FGF)-8に着目し、卵母細胞由来のBMP-6/-15だけでなく、FGF-8も卵胞における卵母細胞−顆粒膜細胞間の機能的ネットワークを形成して卵胞発育を巧みに調節することを明らかにしました。
 今後、エストロゲン作用とBMPシグナルの機能的連関をさらに掘り下げて研究することにより、現在卵巣機能不全に行われている女性ホルモン補充治療に対する卵胞反応性およびエストロゲン投与の適否についても予測できる可能性があります。また、血中および卵胞局所でのBMPレベルを決定することで、卵巣発育不全の程度や予備能について客観的評価も可能になる応用性もあります。卵巣機能不全の臨床マーカーおよび治療薬として、卵胞BMPシステムへのアプローチは生殖医療へ大きく発展できる新しい策略と考えられます。


[平成23年6月24日掲載]