川崎医科大学 岡本 威明
(平成22年度 受賞者)

サプリメントの安全性評価

 この度は平成22年度教育研究助成を賜りましたことを深く感謝申し上げます。
 サプリメントは、栄養補助食品とも呼ばれることから、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、タンパク質、脂肪酸、食物繊維などの栄養素を補給・補助することが可能な食品であります。厚生労働省が2001年4月からスタートさせた「保健機能食品制度」によると日本でのサプリメントの位置付けは医薬品、医薬部外品、そして、いわゆる健康食品のいずれかに分類されます。医療費が高額なアメリカではサプリメントは幅広く普及しており現在の市場は2兆円であり、日本でも近年の健康・美容ブームによりサプリメントは様々な企業によって製造・販売され2015年には1.9兆円まで規模は拡大すると考えられています。拡大する市場の中で、さらに薬事法による規制緩和が2007年に施行され、消費者がコンビニエンスストアなどで気軽にサプリメントを購入できるようになりました。私も、現在、ビタミンCや青汁を飲んでおりまして、体調も良い状態が保たれています。他方、このようにサプリメントが溢れる中で特に注意しておかなければならないのがサプリメントによる健康障害であると考えています。
 ここで少し、過去に起こったサプリメントに関する事故について紹介しますと、1989年米国にてトリプトファンサプリメント摂取による激しい筋肉痛と好酸球の異常増加を伴う好酸球増多筋痛症 (EMS)と呼ばれる健康障害が起きました。トリプトファンは精神を安定させる作用を持つセロトニンの前駆物質として、不眠、うつ状態、月経前症状に対して効果のあるサプリメントとして現在でも広く販売されています。このような効果を持つトリプトファンサプリメントを1989年当時、約200万人が摂取し、その内38名の方が亡くなられました。EMS発症の原因として、①サプリメントの過剰摂取、②特定時期の製品中に含有していた不純物の毒性、③患者の特異な体質による影響、が原因だと考えられています。前述の①、②の原因に着目した我々の研究結果から、ヒト好酸球に対して、高濃度トリプトファンとトリプトファン製品中の不純物を共刺激すると、トリプトファン分解酵素(IDO)の発現が抑制されることが明らかとなり、さらにCD4陽性T細胞からのIFN-γ産生が抑制されたことでTh1-Th2バランスがTh2優位へ傾きアレルギー症状をさらに悪化させ、EMS発症の引き金になったのではないかと考えています。
 今後も、トリプトファン摂取によるEMS発症機序を解明していく中でIDO測定系を用いたサプリメントの安全性評価が市場に出る前に行えるようになれば、サプリメント全体の安全性がより確かなものになっていくのではないかと考えています。

[平成23年2月21日掲載]