川崎医科大学附属病院 MEセンター 小野 淳一
(平成22年度 受賞者)

透析治療の質的向上をめざして

 この度は、平成22年度教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。この場をお借りしまして選考委員の先生方および関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
 透析治療は体外に血液を取り出した上でダイアライザーと呼ばれる人工腎臓装置で血液を浄化した後に、再び血液を体内に返す治療です。この治療を行う上で必要不可欠なのが血液の取り出し口である「バスキュラーアクセス」です。特に、撓骨動脈と撓骨皮静脈を外科的に吻合し動脈血を静脈血管に人工的に流す内シャントは、感染のリスクが少なく、長期使用が可能であることから、最も普及しているバスキュラーアクセスです。
 しかし、その一方で、内シャントは人工的に造られた血流路であることから、動静脈吻合部や反復穿刺部などに血管狭窄が発生しやすく、透析治療に必要とすべき十分な血流量が確保できなくなる恐れがあります。十分な血流量が確保できなければ透析治療効率は低下し、透析患者の生命予後に悪影響を及ぼすことが危惧されます。このため、透析スタッフは週3回行われている透析治療の際に、このようなバスキュラーアクセス機能不全を早期に発見し経皮的血管形成術を行うことが望まれます。
 我々は、このようなバスキュラーアクセス機能不全を検出する方法として、実際に透析前後の採血から得られた透析効率と透析治療条件から理論的に得られるであろう透析効率を比較する手法「クリアランスギャップ」を提唱し、その有用性を報告してきました。クリアランスギャップは、透析前後の採血結果をもとに算出することができるため、特殊な装置が必要なく、多くの患者さんを対象に定期的にモニタリングすることができるといった利点があります。しかし、その一方で、クリアランスギャップに影響を及ぼす因子は、その他にもあるため、バスキュラーアクセス機能不全の確定診断を実現するためには、その他の指標と組み合わせる必要があります。そこで、本研究では、体外循環回路内の実血流量を測定し、得られた脱血特性から、バスキュラーアクセス機能不全を証明していきたいと考えています。さらに、実血流量を測定するためには、超音波センサーなど高価な装置が必要となりますが、並行して既存の透析装置で利用されている回路内圧波形から実血流量を推定する手法の開発にも取り組んでいます。このような研究をもとに、多くの施設が、日常臨床で活用できるバスキュラーアクセス機能不全の検出プログラムを確立し、バスキュラーアクセスの長期使用とともに十分な透析効率を確保することにより、透析患者の長期予後改善を実現していきたいと考えています。

[平成23年4月19日掲載]