川崎医科大学 矢作 綾野
(平成22年度 受賞者)

Th17と関節リウマチ

 この度は、研究テーマであります「マウス自己免疫性関節炎の病態に関与するIL-17産生T細胞の起源」に対し、平成22年度教育研究助成をいただき、誠にありがとうございました。この場をお借りしまして選考委員の先生方および関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
  免疫応答を制御するヘルパー型T細胞は細胞性免疫を担うTh1 型細胞と液性免疫やアレルギー反応に関与するTh2 型細胞というサブセットに大別できることを1989年、MosmannとCoffmanらが提唱しました。その後、多くの疾患の病態に関与する異常な免疫応答がこれら2つのサブセットの応答の偏りで説明されて来ました。そこに2005年、新たなヘルパーT細胞のサブセットとしてIL-17を産生するCD4+ T 細胞(Th17 細胞)の概念が示されました。近年、学会に参加すると多くの研究者がTh17の分化や疾患との関連性について発表されています。さらに私が頻繁に使用する教科書「Immunobiology」を開いてみると第6版まではTh1、Th2についての説明のみでしたが、最新本の第7版にはTh17について詳細な説明が記載されており、あらためてこの概念の重要さを認識させられます。
 一方、関節リウマチ(RA)は慢性的な多発性関節炎を特徴とする原因不明の自己免疫疾患であり、組織破壊に直結する炎症性エフェクターサイトカイン(TNFα, IL-6)に加えてTh17が注目されています。IL-17は好中球の遊走や破骨細胞の活性化を誘導することや、IL-17欠損マウスにおいてコラーゲン誘発関節炎の発症が抑制されることからRAの病態との関連が強く示唆されています。私の所属する免疫学教室では自己免疫性関節炎を自然発症する変異サイトカイン受容体ノックインマウスを用いて、発症初期の免疫応答に注目し検討を行っています。特に関節炎発症と関連した経時的なIL-17産生細胞の動態解析やIL-17の生理的産生と病理的産生に関する報告はこれまでにないことから、IL-17産生臓器と産生細胞を同定し、関節炎発症との関連を明らかにしたいと考えております。
 現在、ヘルパー型T細胞のサブセットはTh17の概念が確立されて以降、Th9、Th22、Tfh等多くの種類が提唱されていることから、変動期を迎えています。その歴史の中で、RAとIL-17の関連についての研究成果をあげていきたいと思います。


[平成23年1月21日掲載]