川崎医科大学 青木 淳哉
(平成23年度 受賞者)

発症時間不明の脳梗塞に対するアルテプラーゼ静注療法

 この度は平成23年度(財)川崎医学・医療福祉学振興会・教育研究助成を承認頂きありがとうございました。現在、脳梗塞急性期治療の第一選択は経静脈的な血栓溶解療法(アルテプラーゼ静注療法)です。組織プラスミノゲン活性化因子であるアルテプラーゼはプラスミンを活性化させることで血栓を溶解し、閉塞血管を再開通させる作用を有する薬剤です。我が国でも2005年10月に、発症3時間以内の超急性期脳梗塞患者に対するアルテプラーゼ静注療法が認可されました。市販後調査(J-MARS)では2007年10月までに推定942施設7,492症例に対して使用され、3ヶ月後の転帰良好例の割合は33%と海外や国内の治験の報告とほぼ同等の成績でした。この治療法の認可は、脳梗塞診療を劇的に変えました。より早く発見し、迅速に医療機関へ搬送し、速やかに治療を開始することが求められています。
 一方で約25%の急性期例は発症時間が不明であるため同療法の対象から除外されています。頭部MRI画像、拡散強調画像(DWI)は発症早期から脳梗塞巣を検出でき、FLAIR画像は発症から時間が経過するにつれて虚血巣の検出率が上昇するという特徴があります。我々の検討や欧米からの報告から、DWIで高信号を呈していてFLAIRで信号変化がない場合(DWI/FLAIRミスマッチ)、発症3時間以内と推定できるとの結論を得ています(Aoki JNS 2010;293:39)。
 そこで我々は発症時間不明の脳梗塞例に対してDWI/FLAIRミスマッチに基づいたアルテプラーゼ静注療法を行い、その安全性を検討しています。本研究は当院倫理委員会の承認を受けJapan Clinical trial registry(UMIN000001808)に登録しています。2009年6月から2010年5月までに当院へ入院した発症時間不明の脳梗塞連続10例の検討では、24時間以内の再開通は7例でした(完全再開通:4例、部分再開通:3例)。症候性頭蓋内出血は0例。発症7日後の劇的改善例(NIHSSスコア10点以上の改善、又は0点)は5例であり、発症3ヶ月後の転帰良好例は4例でした。(Aoki , Kimura. Cerebrovasc Dis 2011;31:435)。少数例の検討ですが、発症時間が不明であってもDWI/FLAIRミスマッチがあればアルテプラーゼ静注療法の対象になる可能性があるとの結論が得られました。
 同様のFLAIR画像に基づいた研究は、韓国、アメリカでも行われていますが、川崎医科大学は海外と同等以上の医療水準を有していると確信しています。今後も本研究を安全性に注意しつつ継続し、より良い治療方法として提示していける様に努力していきます。


[平成23年8月29日掲載]