川崎医療福祉大学 藤野 雅広
(平成24年度 受賞者)

「創傷治癒機転から骨格筋再生治療への挑戦」

 この度は平成24年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜りたいへん光栄に存じます。関係の方々に深く感謝申し上げます。
 私の研究テーマは「創傷治癒機転からの筋ジストロフィー骨格筋再生分子の探索」です。筋ジストロフィーとは病理学的には骨格筋細胞の変性と壊死を主病変とし、二次的に骨格筋線維の再生と間質の線維化を来す遺伝性疾患群の総称です。進行性の全身筋力低下を呈し多くは最終的に致死的となるため、有効な治療法の開発が強く望まれている難病で、代表的疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne musucular dystrophy : DMD)は劣性遺伝形式を示し、X染色体短腕に位置するジストロフィン(dystrophin)遺伝子が責任遺伝子として1986年に同定されました。
 mdxマウスは自然発症ジストロフィン変異欠損マウスであり、劣性遺伝形式を示し、骨格筋では筋細胞の壊死再生及び間質の線維化などの筋ジストロフィー変化が認められDMD疾患モデルと考えられています。一方、1998年に米国Whister研究所で、マウスの個体識別のために耳穴を開けたところ、約4週間で耳穴が傷跡も残さず完全閉鎖するというユニークな自然変異マウスが発見されました。このMRLマウスは、角膜損傷や心筋損傷に対して“線維化を来さない”創傷治癒促進効果、即ち哺乳類でありながら創傷組織がほぼ完全に再生するという極めてユニークな形質を示します。
 私たちは、これまでにこの創傷治癒形質MRLを交配によりDMDモデルmdxマウスに導入することによってmdxマウスで認められる骨格筋病変が改善することを発見しました。現在、この創傷治癒形質MRL導入筋の解析によって、創傷治癒というこれまで皆無の観点から慢性疾患である筋ジストロフィーの骨格筋再生を促進する新しい分子の探索に日夜挑戦しています。基礎研究でワクワクしたい学生さんの参加を期待しております。御連絡下さい。


[平成24年8月1日掲載]