川崎医科大学 原 裕一
(平成24年度 受賞者)

ミトコンドリアとマイトファジー

 まずは、川崎医学・医療福祉学振興会の教育研究に係る助成(平成24年度)を賜り、深く感謝申し上げます。
 私は4年前に川崎医科大学に着任し、その1年後から現在のテーマであるHCVとマイトファジーの関連性について研究してまいりました。マイトファジーという言葉は聞いたことがない方がほとんどだと思います。マイトファジーとはオートファジーの一種で傷ついた(ミトコンドリアの膜電位が低下した)ミトコンドリアを選択的に除去する機構で、ミトコンドリアのクオリティコントロールを行うとされています。私は大学院生の時代から、HCV(C型j肝炎ウイルス)関連発癌における酸化ストレスの役割について注目し、研究を行ってまいりました。その結果、私たちのグループから、HCVはミトコンドリア障害を引き起こし、活性酸素の産生を増強させ、このことがミトコンドリア障害を惹起し、ひいては肝発癌を引き起こすことを報告することができました。そこで私が一つ疑問に感じたのは細胞内器官でATPを産生するというとても重要な役割を担うミトコンドリアは当然のようにそのメンテナンス機構が存在しています。それにもかかわらず、障害されたミトコンドリアがHCV感染細胞で持続して存在するということはそのメンテナンス機構が障害されているのではないかと考え、メンテナンス機構の一つであるマイトファジーに注目しHCVとの関連性について研究を行ってまいりました。マイトファジーにはパーキンソン病の原因遺伝子であるPARK2がコードするParkinという蛋白が、重要な働きをするのですが、私はこのParkinがHCVと結合することによりマイトファジーを抑制することを明らかにすることができ、現在論文を投稿中です。将来このParkinという蛋白とHCVの関連をさらに検討することで肝癌を治療する際の重要なkey moleculeになる可能性を探ることと、ミトコンドリアおよびミトコンドリアのメンテナンス機構が他の酸化ストレスに関連した肝疾患とどのようにかかわっているかも明らかにしていきたいと思っています。
 最後にこの研究を行う中で多くの方々にご協力をいただきました。特に分子生物学の岸先生、梁取先生、解剖学の樋田先生、清蔭先生には多大なご協力をいただきました。心からお礼を申し上げます。


[平成25年5月27日掲載]