川崎医科大学 小野 成紀
(平成25年度 受賞者)

ミャンマーにおける脳神経外科医療の実態報告と日本からの医療支援
平成25年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会助成事業による経験から

 古くは先の大戦でこの中国地方からも多くの兵士がビルマ戦線へ派兵されたことからミャンマーに対して日本に近しい国のイメージを持たれる諸兄もおられるかもしれない。しかし、ここ数年前まで軍事政権下でスーチー女史が軟禁され、民主化や国際交流とは無縁の国であったミャンマー。その当時は北朝鮮と比較されることも多く、邦人が射殺され大きな社会問題になったりしたことも記憶に新しい。それがここ数年、軍事政権は経済開放政策として、西側諸国からの支援を急速に受け入れ著しい発展をとげている。
 そのような中、幸運にも川崎医学・医療福祉学振興会より助成いただく機会を得、昨年、岡田茂、岡山大学名誉教授を中心とするNPO法人の支援事業に随行し、ミャンマーの医療事情などについて触れる機会を頂いた。
 我々は、平成25年1月、ヤンゴン総合病院脳神経外科を訪問し脳神経外科主任教授のMyat Thu先生を初めとする脳神経外科スタッフと面会し、合同手術を含めた国際チーム医療を行うこととなった。訪緬するまで現地の様子は全くと言ってよいほど伝わっておらず不安要因が多かったが、現地では、日本と異なり頭部外傷が手術症例の多くを占めること、また脳瘤・水頭症といった先天奇形が多いことが分かった。また手術症例数に対する脳外科医の数が極めて少なく(人口6千万人に対して10人以下)、外傷手術や先天奇形の手術で忙殺される状況で、くも膜下出血などの脳血管障害の治療にまで手が回っていない状況であった。現地では大きな脳腫瘍のCT写真を見せられ明日執刀してほしいといわれるような状況で、何とか手術用顕微鏡はあるものの、日本で必要とされる検査は多くが行えず、あるものを駆使して摘出を行ったりした。ひどい頭蓋顔面の醜形を呈する脳瘤患児の手術を数例、下垂体腺腫のHardy手術、耳鼻科、形成外科、脳神経外科合同での巨大頭蓋底腫瘍摘出術を行った。日本では経験出来ないような症例を目の当たりにし、使用手術機器が限定される中、結果を出すことの難しさを改めて感じた次第である。今後はさらにこの活動を広めるべく、岡山発の脳外科医療支援として、頭部脊椎などの交通外傷、頭頸部・脳瘤等の顔面奇形疾患などの治療体制の確立ならびに治療方法のbrush up をはかることを目的とし、年間1,2回を目標にミャンマーを訪問し、合同脳外科手術を行ったり、これらの疾患に関する講演等を行う予定である。また、特に脳瘤は日本では非常に稀な疾患であり、本交流がミャンマーにおける岡山発の脳神経外科先進治療の支援と言う側面だけでなく、今後、本学における医学生や脳神経外科研修医などにとっても非常に稀な疾患の治療経験を得る機会になるものと考えられ、大変意義深いものと考えられた。
 最後に、重ねてこのような機会を与えていただいた助成事業に関わる皆様に心から深謝申し上げる次第である。


[平成26年10月6日掲載]