川崎医科大学 陸 豊
(平成25年度 受賞者)

『平成25年度川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成』を受賞して

 この度は「平成25年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成」の受賞者に選んで頂きましてありがとうございました。この度の助成を心より感謝申し上げます。
 私の研究テーマは、「出血性脳障害後の細胞障害における新規薬剤(2C1-C.OXT-A)の効果の検討」というものです。脳出血とは脳内の血管が何らかの原因で破れ、脳のなかに出血した状態です。そのために意識障害、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れ、死亡率も高くなります。脳出血急性期の治療としては血腫除去術や抗浮腫薬の投与などがよく行われていますが、十分な治療効果を得られない症例も多いため、脳出血に対して新規の治療薬の開発が待たれています。2Cl-C.OXT-A(COA-Cl)は徳島文理大学と香川大学医学部において開発されたアデノシン類似体の新規合成化合物です。この新規化合物は水溶性の安定低分子であり、血管新生促進作用および脳梗塞に対する神経栄養と保護作用を有することが報告されています。さらに、この薬剤は細胞の増殖・分化における共通のシグナル伝達系であるMAPキナーゼカスケードの活性化に関与することが分かっています。出血性脳障害時に起こる酸化ストレスやアポトーシスなどにはMAPキナーゼカスケードの関与があることから、本薬剤は脳出血に対しても症状を軽減させる効果があるのではないかと考えられます。そこで私は、ラット脳出血モデルに対するCOA-Clの神経細胞保護作用とそのメカニズムについて検討しました。結果としては、COA-Clは脳出血急性期の脳浮腫を軽減し、アポトーシス陽性細胞数を有意に減少させました。また、COA-Cl 投与群では非投与群に比べると脳出血による運動機能障害を軽減し、DNA酸化のマーカーである8-OHdG陽性細胞数が有意に減少しました。よって、COA-Clには出血性脳細胞傷害に対して細胞保護効果があることが示唆されました。
 今後は、さらに分子レベルでの作用機序について検討し、臨床応用をめざして研究を続けていきたいと思います。


[平成26年5月20日掲載]