川崎医療福祉大学 坂本 圭
(平成25年度 受賞者)

今後の医療福祉政策のあり方に関する検討に向けて

 この度は、平成25年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会助成事業に関し、教育研究助成を賜り誠にありがとうございます。本受賞のテーマは、「近世医療福祉政策の歴史分析を目的としたリレーショナル・データベースの構築」 -長期的視野に立った医療福祉政策のあり方の検討に向けて- です。
 現在、医療福祉を取り巻く環境は大きく変化するとともに、少子高齢化や国の財政状況の悪化から、過去に積み上げてきた医療福祉制度の目的や概念は変化しつつあり、本来の医療福祉制度の目的とは異なったかたちで運営されています。以下に、医療保険制度を取り上げ、考えてみたいと思います。
 「いつでも、どこでも、だれでも」平等にというスローガンで、1961(昭和36)年にスタートした「国民皆保険」は50年が経過し、国民の生活にとって不可欠な存在となっています。ところが、世界に誇れるわが国の医療保険制度も、高齢化に伴って財政問題を中心として、転換期を迎えることとなりました。すなわち、1970年代の高度経済成長を背景に実施された老人医療費支給制度(老人医療費の無料化)もオイルショックを契機に、わずか10年間で自己負担を前提とした各種医療保険制度から、拠出する老人保健制度に衣替えをしました。すなわち、必然的に増え続ける老人医療費とは対照的に国家財政は悪化し、何度となく自己負担の引き上げや保険料の引き上げ、対象年齢の引き上げなど、‘ad hoc’な制度改正が行われてきました。そのため、1990年代になって、高騰し続ける老人医療費に対処するために、介護保険制度や後期高齢者医療制度に代表されるように、市場原理(競争社会)を医療サービスの分野にも導入しようとする動きが表れはじめました。
 そこで、今回は新たな歴史分析の準備的考察として、医療サービスの分野に市場原理(競争社会)を導入しているアメリカの医療制度改革の歴史・研究や医療をとりまく経済環境及び担当政権との関係を概観することからスタートさせました。この研究を進めアメリカの辿った歴史を分析・検討していくことで、将来日本の医療福祉政策の展望が可能となると考えております。
 現在、本研究はスタートしたばかりであり、このような歴史分析は継続していくことが必要であると考えております。今回の受賞をきっかけに、引き続き今後も研究活動に精進していく所存です。


[平成27年1月22日掲載]