川崎医科大学 簗取 いずみ
(平成25年度 受賞者)

感染症に対する新たな予防・治療の方法を目指して

 この度は平成25年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜りたいへん光栄に存じます。選考委員の先生方および、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
 私が所属する分子生物学2(遺伝学)教室では、『肺炎クラミジアの感染機構の解明と新規予防法の開発』を目標に、酵母を用いてその病原性を探索するという革新的な方法を取り入れ、研究を進めています。
 肺炎クラミジア感染症は、成人の約60%に抗肺炎クラミジア抗体が存在するというありふれた疾患です。しかし、肺炎クラミジアは、偏性細胞内寄生菌であり、実験室レベルでの解析が困難であったため、これまでその感染機構についてはほとんど不明のままでした。近年の分子生物学的技術の発達により、細菌の感染戦略が明らかにされるに伴い、肺炎クラミジアについてもその機構が徐々に明らかになってきました。肺炎クラミジアは、V型分泌装置を用い、エフェクターと呼ばれる病原因子を宿主細胞に送り込むことで、宿主細胞内に侵入し、生存・増殖をすることを可能します。肺炎クラミジアには約1000個の遺伝子が存在し、そのうち10-20%がエフェクター分子であると推測されています。しかし、現在までに明らかにされたエフェクター分子は10種類程度であり、未だ100種類以上の分子については、全く判っていません。そこで、当研究室では、酵母を用いて網羅的スクリーニングを行う方法を開発しました。真核生物である酵母に、肺炎クラミジア機能未知遺伝子455種類を各々発現させ、酵母が示す様々な表現型をみることで、エフェクター分子の探索を行いました。組換え体酵母の表現型として、1)増殖抑制、2)酵母の細胞内輸送異常の2つの指標を用いました。これらの解析の結果、約70種類の分子を見出すことに成功しました。今後は、これらエフェクター分子の機能解析を進めることにより、肺炎クラミジアの感染戦略について明らかにしていく予定です。また、肺炎クラミジアは偏性内細胞寄生菌ゆえに、感染後完全に除去することが困難であり、持続感染が動脈硬化をはじめ、様々な疾患に関与することが報告されてきました。これらの持続感染菌に対しても、新たな治療薬の開発が望まれており、本研究で得られた成果を、さらに発展させるよう研究に取り組んでいきたいと考えております。


[平成26年7月18日掲載]