川崎医科大学 庵谷 千恵子
(平成26年度 受賞者)

川崎医学・医療福祉学振興会助成に感謝して〜近況報告〜

 このたびは、平成26年度川崎医学・医療福祉学振興会助成を賜り、誠にありがとうございました。選考委員の先生方ならびに関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
 私の研究テーマは「スタチンの生体内抗酸化機構Nrf2活性化を介した腎保護効果の検討」です。慢性腎臓病(以下CKD)は日本でも増加の一途をたどり、患者数は1330万人、20歳以上の成人の8人に1人がこの病気に該当すると推定され、今や新しい国民病とされています。また、脂質異常症はCKD 進行のリスク因子です。海外での大規模臨床試験のサブ解析、メタアナリシスおよび少数例での検討から、高脂血症治療薬HMG-CoA還元酵素阻害薬スタチン系薬剤によるCKD患者への尿蛋白減少効果や腎機能改善効果が報告されています。スタチン系薬剤は、コレステロール合成を抑制するとともに、NADPHオキシダーゼの抑制、NO産生亢進、LOX1発現抑制等により抗酸化作用を示します。しかし、腎保護効果をもたらす詳細なメカニズムは未だ明らかにされていないことに着目いたしました。
 一方、Nuclear factor-erythroid 2 related factor 2 (Nrf2) は、酸化ストレスに応答して生体防御遺伝子群の発現を制御している転写因子であり、抗酸化酵素・解毒酵素を制御しています。Nrf2を活性化する薬剤は、活性酸素、化学物質、加齢が原因の疾病を予防・治療するのに有用であるとされています。Nrf2で誘導される遺伝子群とスタチン系薬剤で誘導される遺伝子群には共通するものが多いことから、「スタチンが転写因子Nrf2活性化を介して腎保護効果を発揮する」との仮説を立て、検証をいたしました。
 この成果はBiochemistry & Pharmacology 2014に掲載しております。この場をお借りして御指導いただいた多くの先生方に感謝申し上げます。

[平成27年7月8日掲載]