川崎医科大学 刀祢 重信
(平成27年度 受賞者)

第24回Wilhelm Bernhard Workshop on the cell nucleusに参加して

 貴財団の国際教育・研究交流事業のご支援によりまして、2015年の8月に第24回Wilhelm Bernhard Workshop on the cell nucleusに参加いたしました。本ワークショップは、細胞核の電子顕微鏡による解析の草分けであるWilhelm Bernhard博士の名前を冠していることからわかりますように、細胞核の構造と機能を研究する者たちが一堂に会するmultidisciplinary な国際会議です。以前から参加したかったのですが、今回貴財団のおかげで参加できました。感謝いたします。この会は2年に1回、欧州の片田舎でひらかれ、今回はオーストリアのウイーンの森の中、Schloss Wilhelminenbergという貴族の館を造りかえた瀟洒なホテルが会場でした。
 今回の5日間の会期で特に印象深かったのは、核構造やゲノムを解析する新しい手法についての話題が多かったことです。なかでも3C法、4C法やHi-C法といった核クロマチンの任意の2点間の距離のダイナミックな変化を捉える方法が使われていました。しかし、これらの方法には限界があり、artifactが入り込む危険性が指摘され、FISH法などの従来法と照らし合わせていくことが重要だという議論がありました。そして私の講演はなんと最終日の最後に指定され、最後までリラックスできませんでした。海外の講演では何回か、ウイットに富んだジョークを入れることになっていますが、冒頭に用意したジョークが全くの不発で落ち込みましたが、その直後の何気ない私のひと言が予想外の大爆笑を誘発し、絶好調になりました。細胞は、死ぬときに自らの核を強く凝縮させますが、そのメカニズムについて、この数年間にやってきたことを30分間にまとめてお話しました。私たちはこれまでに、cell-freeアポトーシス法とリアルタイムムービーを用いて、核凝縮が1)リング, 2)ネックレス, 3)核崩壊 の3stageに分けることができ、個々の核はこの過程を忠実にたどり同調性高く30分ほどで凝縮することを明らかにしてきました。細胞は、死にあたって、無秩序に自らを破壊するのではなく、決まった因子がプログラム通りに粛々と働くことで死を実行するのです。細胞の中にも仏性があると言えるのかもしれません。私たちが提唱している核凝縮の 3stageはだんだん市民権を得つつあります。更にこれまで3stageを動かす因子の同定を進めてきました。今後は、3C法などの新しい技術を使ってクロマチンや核内ボディーのダイナミクスについて解析していきたいと思っています。

[平成28年3月8日掲載]