川崎医療福祉大学 山本 加奈子
(平成28年度 受賞者)

ラオスにおける腸管寄生虫症に関する共同研究

 このたびは、平成28年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会 国際教育・研究交流助成(派遣)を賜り、誠にありがとうございました。
 本共同研究の目的は、ラオス人民民主共和国(以下ラオスとする)における学童の腸管寄生虫症の実態を調査することでした。ラオスは、人口677万人(2014)、49少数民族が住む多民族国家です。保健医療については、平均寿命は66歳、乳児死亡率も53人(出生1000対)であり、近年改善が見られるものの周辺諸国に比較して遅れており、2015年までのミレニアム開発目標も達成されませんでした。デング熱、マラリア、腸管寄生虫症(以下寄生虫症とする)、腸チフス、結核などが今なお蔓延しており、感染症がラオスの死因の上位を占めております。本研究の対象である回虫、鞭虫、鉤虫に代表される腸管寄生虫症は、NTDs(Neglected Tropical Diseases:顧みられない熱帯病)のひとつとして、WHOの保健対策の重要課題でもあります。ラオスでは、2006年より小中学校におけるMDA(Mass Drug Administration:駆虫薬一斉投薬)が開始されました。今年で10年が経過し、MDAの評価を兼ねて、北部のルアンパバーン県内6郡18の小学校の学童を対象に、腸管寄生虫症の実態調査を、ルアンパバーン県立マラリア・寄生虫学・昆虫学センターと共同でおこないました。
 本研究の結果、全校における全虫卵陽性率は40.2%で、2002年の全国調査時の61.9%のプレコントロールレベルに比較して、若干の減少傾向を認めました。虫卵別では、回虫15.6%、鞭虫42.4%、鉤虫38.5%でした。回虫卵の陽性率は、プレコントロールでは90〜100%近い小学校もありましたが、対策の成果が伺えます。しかし、鞭虫、鉤虫においては、やや減少傾向であるものの、残念ながら横ばいの現状が確認され、投薬方法の見直しが示唆されました。また、幹線道路へのアクセスが悪く、水道・トイレの整備が整っていない小学校では、陽性率が高い傾向にあり、健康教育と衛生環境の改善など、ソフト・ハード両面の支援が必要であるといえます。
 保健医療の課題を残しながらも経済成長が目まぐるしい当該国では、今後さらに保健医療や衛生環境が改善されることを期待し、研究活動を通して、協働していく所存です。
 

[平成29年7月21日掲載]