助教 森 幸太郎

 

院長写真

【略 歴】

2009年 筑波大学医学専門学群 看護医療科学類 医療科学主専攻 卒業
2011年 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 フロンティア医科学専攻 修了 (永田恭介教授)
2015年 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 生命システム医学専攻 修了 (永田恭介教授)
2015年 公益財団法人 微生物化学研究会微生物化学研究所 (微化研) 博士研究員 (滝沢直己上級研究員)
2016年 日本学術振興会特別研究員PD (微化研) (滝沢直己上級研究員)
2019年 川崎医科大学微生物学教室 助教

【研究内容】

インフルエンザウイルスのゲノム変異発生頻度を制御する分子メカニズムの解明
インフルエンザウイルスは宿主の免疫機構をかいくぐって呼吸器感染症を発症し、高齢者を中心に毎年多くの犠牲者を出します。発症した場合は抗インフルエンザウイルス薬を服用しますが、従来使用していた抗インフルエンザウイルス薬のみならず、近年承認された新薬でさえも、すでに薬の効かないウイルスが出現していることが報告されています。これは、生体内で増殖するときにウイルスの遺伝子(ゲノム)に高頻度で変異が起こるため、薬に耐性がある(薬が効かない)ウイルスが生じやすいという、インフルエンザウイルスの特徴に起因しており、医学的にきわめて深刻な問題です。感染予防としてはワクチンが有効であり、わが国では精製したウイルスを界面活性剤で分解した後に、副反応である発熱の原因となる脂質膜成分を除去した安全性の高い不活化ワクチン、いわゆる「スプリットワクチン」が製造・使用されています。しかしながら、その有効性が低いことも指摘されており、より有効性が高いとされる「弱毒化生ワクチン(ヒトの体温では増殖しにくくなる変異をあらかじめ組み込んだウイルス株を生きたまま接種する)」が使用されている国もあります。ただし、この「弱毒化生ワクチン」には、インフルエンザウイルスの変異しやすい性質のため弱毒化変異が解消されてしまい、ワクチン接種によって呼吸器感染症を発症する可能性がある(病原性を発揮してしまう)という問題があり、最もワクチンを必要とする乳幼児と高齢者、病気等で免疫不全がある人に使えません。このように、「変異しやすい」というインフルエンザウイルスの特徴はワクチンの有効性に深く関与するため、そのしくみを解明することが重要ですが、変異を生じる頻度が分子レベルでどのように規定されているのかについてはいまだ不明のままです。もしインフルエンザウイルスの変異頻度を規定する分子メカニズムが明らかになれば、変異を起こしにくいウイルスを人工的に作製することで、弱毒化変異が解消される可能性が低い(すなわち病原性が発揮されない)安全な生ワクチンの作製が可能になります。さらに、変異頻度を規定するメカニズムの解明によりインフルエンザウイルスの変異頻度を人為的かつ任意に変動させることができるようになれば、インフルエンザの新たな制圧法の開発につながる可能性もあります。このように、将来の臨床応用を見据えた基盤研究として、「インフルエンザウイルスにおけるゲノム変異発生頻度制御機構の分子レベルでの解明」と「変異を生じにくいウイルスを利用した安全性の高いワクチンの開発」を行っています。

【論 文】

Generation of a genetically stable high-fidelity influenza vaccine strain.
Naito T, Mori K, Ushirogawa H, Takizawa N, Nobusawa E, Odagiri T, Tashiro M, Ohniwa RL, Nagata K, Saito M.
Journal of Virology, Vol.91, e01073-16, 2017.

Oseltamivir Expands Quasispecies of Influenza Virus through Cell-to-cell Transmission.
Mori K, Murano K, Ohniwa RL, Kawaguchi A, Nagata K.
Scientific Reports, 5:9163, 2015.

Tamiflu-resistant but HA-mediated Cell-to-cell Transmission through Apical Membranes of Cell-associated Influenza Viruses.
Mori K, Haruyama T, Nagata K.
PLOS one, 6(11) e28178, 2011.